「〜と考えられます」を減らす。受け身をやめると文章の穴が見える

公開 ・ AI文章術

「〜と考えられます」「〜が求められます」「〜されています」。丁寧に見えるのに、読み終わっても何も残らない文章があります。共通しているのは、受け身が多いことです。

受け身そのものが悪いわけではありません。問題は、主体を書かなくて済むために使われている場合です。

なぜ受け身だと内容が薄くなるのか

日本語の受け身は、動作の主体を省略できます。これは便利な機能ですが、書き手が「誰が」を決めないまま文を成立させられてしまう、という副作用があります。

適切な管理が求められます。

この文からは、誰が管理するのか、誰が求めているのかがわかりません。読み手は「そうですか」としか思えません。

能動態に直そうとすると、書けないことが露見します。

(誰が?)は(何を)管理してください。

カッコを埋められないなら、その文はもともと何も言っていなかったということです。能動態への書き換えは、文章のチェック手段としても機能します。

直し方の手順

手順1:受け身の述語を探す

次の語尾を探します。

エディタの検索で「られ」「されて」を探すだけでも、かなり見つかります。

手順2:主体を書き出す

見つけた文ごとに、「誰が」を書き出します。

このツールは多くの企業で利用されています。 → 誰が利用している? → 具体名は? 何社?

手順3:能動態に直す、または削る

主体が書けるなら、能動態に直します。

中小企業を中心に、2026年時点で約200社が導入しています。

主体が書けない、あるいは書いても情報にならないなら、その文は削ります

書き換えの例

例1:責任の所在

セキュリティ設定の見直しが推奨されます。

管理者は、四半期に一度セキュリティ設定を見直してください。

誰がいつ何をするかが決まりました。手順書としてはこちらでなければ機能しません。

例2:根拠

この方法が最も効率的と考えられます。

3つの方法を同じ条件で試したところ、この方法が最も短時間で終わりました。

「考えられます」は書き手の推測です。根拠があるなら根拠を書き、ないなら推測であることを明示するか、削ります。

例3:一般論

近年、業務効率化の重要性が高まっているとされています。

これは削ってよい典型です。誰がそう言っているのかも、いつからなのかも書かれていません。記事の冒頭にこの種の文が2〜3個並んでいることがありますが、読み手は本題まで読み進めないと何も得られません。

受け身を残すべき4つの場合

すべての受け身を能動態にすればよいわけではありません。次の場合は受け身が適切です。

1. 主体が不明、または重要でない

このファイルは2020年に作成されました。

誰が作成したかが不明で、かつ重要でないなら、受け身が自然です。無理に「何者かが作成しました」とする必要はありません。

2. 動作の対象を主題にしたい

申請書は、受付後3営業日以内に処理されます。

主題は「申請書」であって処理する側ではありません。この文脈で「担当者が3営業日以内に処理します」と書くと、視点が申請者から担当者に移ってしまいます。読み手の関心がどちらにあるかで決めます。

3. 主体を明示すると角が立つ

一部の設定に誤りが見つかりました。

「担当者が設定を間違えていました」と書く必要がない場面では、受け身が緩衝材として働きます。社内文書ではこの使い分けが必要です。

4. 引用・伝聞であることを示す

この手法は、原著論文では推奨されていません。

自分の判断ではなく出典の内容であることを示す受け身です。これを能動態にすると、書き手の意見と区別がつかなくなります。

判断の基準

迷ったら、次の一点で判断できます。

主体を書けるのに書いていないなら、直す。書けないなら、削るか受け身のまま残す。

「書けるのに書いていない」ケースが、文章を薄くしている受け身です。

AIの出力でとくに多い理由

生成AIの文章に受け身が多いのは、学習元に多いからという理由に加えて、AI が断定を避ける傾向を持つためです。事実として確認できないことを断定しないのは望ましい性質ですが、その結果としてすべてが「〜と考えられます」になります。

対処としては、プロンプトの段階で指定するのが効率的です。

「〜と考えられます」「〜が求められます」などの受動的な表現を使わず、主語を明示して能動態で書いてください。根拠がない場合は、その文を書かないでください。

最後の1文を入れると、根拠のない一般論の段落そのものが減ります。

機械的に見つける

受け身は、書いた本人には気づきにくいものです。丁寧に書こうとした結果なので、違和感を持ちにくいためです。

エディタの検索で「られ」「されて」「求められ」を探すだけでも実用的です。1段落に2つ以上あれば、多すぎると考えてよいでしょう。

このサイトでは、受け身の多さを含めて、文末の単調さ・冗長表現・二重表現・指示語の多さを指摘する推敲支援ツールを準備しています。「AI率」は出さず、該当箇所を示すだけの方針です。公開したらツール一覧に並びます。

関連して、「冗長な日本語を削る」と「「AIっぽい日本語」の正体は7つの癖」もあわせてどうぞ。