冗長な日本語を削る。削ってよい表現と、削ると意味が変わる表現
文章を短くしたいとき、内容を削るより先にやるべきことがあります。意味を持たない語を落とすことです。ここを片づけるだけで、多くの文章は2割ほど短くなり、しかも情報量は一切減りません。
生成AIの出力ではこの種の冗長が特に多く出ます。丁寧に書こうとする力が働くためです。
機械的に置き換えられるもの
まず、ほぼ無条件で短くできるパターンです。
| 冗長な形 | 短い形 |
|---|---|
| 〜することができます | 〜できます |
| 〜することが可能です | 〜できます |
| 〜を行います | 〜します |
| 〜という点があります | (削る) |
| 〜といった形になります | 〜です |
| 〜する必要があります | 〜してください |
| 〜になっています | 〜です |
| 〜に関して | 〜について/〜は |
| 〜における | 〜の |
| 〜を実施する | 〜する |
| 〜の実現を図る | 〜する |
たとえばこうです。
設定の変更を行うことが可能となっています。
設定を変更できます。
24文字が11文字になり、意味は変わっていません。
二重表現
意味が重複した組み合わせです。片方を落とします。
- まず最初に → まず
- あらかじめ事前に → 事前に
- 約3割程度 → 約3割
- 必ず必要 → 必要
- 各々 → 各
- 今の現状 → 現状
- 一番最初 → 最初
- 頭痛が痛い型の重複全般
AI は修飾を重ねることで丁寧さを出そうとするため、この種の重複が混ざります。
主語の繰り返し
日本語は主語を省略できる言語です。同じ主語が続くなら、2回目以降は落とせます。
本ツールは無料です。本ツールは登録が不要です。本ツールはブラウザ内で動作します。
本ツールは無料で、登録も不要です。処理はブラウザ内で完結します。
英語の直訳調では毎文に主語が立ちますが、日本語では不自然になります。
「〜のような」「〜といった」の乱用
セキュリティのような観点においては、暗号化といった対策が重要になります。
「〜のような」は例示のための表現ですが、断定を避けるクッションとして使われると、何も言っていない文になります。
セキュリティの観点では、暗号化が重要です。
ここからが本題:削ってはいけないもの
上のパターンを機械的に適用すると、意味が変わってしまう例があります。ここを区別できるかどうかが、推敲の精度を分けます。
「〜することができます」が「可能性」を意味する場合
このプランでは、月に3回まで変更することができます。
これは「変更できる」に置き換えて問題ありません。しかし次はどうでしょうか。
設定によっては、同じ操作を複数回実行することができてしまいます。
こちらは「意図しないことが起こりうる」という含みがあります。「実行できてしまいます」に縮めるのは可能ですが、「実行します」にすると意味が変わります。可能性を述べているのか、能力を述べているのかを見てから削ります。
「〜する必要があります」が義務を意味する場合
事前にバックアップを取る必要があります。
これを「バックアップを取ってください」にすると、指示になります。手順書ならそれでよいのですが、「そうしないと問題が起きる」という条件の説明であれば、意味が変わります。
バックアップを取っていない場合、この操作は取り消せません。
こう書き換えるほうが、伝えたいことに近いはずです。
「〜と考えられます」が推測を意味する場合
この原因はキャッシュの不整合と考えられます。
これを「キャッシュの不整合です」と断定に変えると、未確認の推測が確定事実になってしまいます。冗長さを避けるために確度を上げてはいけません。
一方、次のような使い方は削れます。
本機能は多くの利用者にとって有用であると考えられます。
これは書き手が断定を避けているだけで、推測の内容に価値がありません。段落ごと落としても情報は減りません。
敬語・緩衝表現
お手数ですが、ご確認いただけますでしょうか。
冗長といえば冗長ですが、これは関係性を維持するための情報です。社外文書や依頼のメールでは必要な要素です。削ってよいのは、読み手に何かを説明する文章のなかで、意味なく挟まれている場合に限ります。
判断の順序
推敲するときは、この順で見ると迷いにくくなります。
- 二重表現を消す(例外なし。機械的に処理できる)
- 「〜を行う」「〜における」を短くする(ほぼ例外なし)
- 「〜することができます」を見る(可能性の含みがあるかを確認してから)
- 「〜する必要があります」を見る(義務か条件かを確認してから)
- 「〜と考えられます」を見る(推測に価値があるかを確認してから)
1と2は自動化できます。3以降は文脈を読む必要があるので、指摘だけ受けて自分で判断するのが現実的です。
どこまで削るか
削れるだけ削れば良いというものでもありません。すべての文を最短にすると、詰まった読みにくい文章になります。
目安として、次の2つは残してよい冗長です。
段落の最初の1文:やや長めのほうが、これから何の話をするかが伝わります。 転換点の接続:「ただし」「一方で」を消すと、論理の切れ目が見えなくなります。
削るのは、文の途中で意味を持たずに膨らんでいる部分です。文と文のつなぎ目は、むしろ丁寧なほうが読みやすくなります。
自動でチェックする
冗長表現は、書いた本人にはいちばん見えにくい部類です。書いているときは丁寧に書こうとしているので、その丁寧さが冗長になっていることに気づけません。
このサイトでは、上に挙げたパターンを指摘する推敲支援ツールを準備しています。「AI率」のような判定は出さず、該当箇所と短い形の候補だけを示す方針です。判断は書き手に残します。公開したらツール一覧に並びます。
文末の単調さについては「文末が「〜ます。」ばかりになるときの、7つの崩し方」に、生成AI特有の癖全般については「「AIっぽい日本語」の正体は7つの癖」にまとめています。